【Photographs by】Ying Ang(イング・アン)
【出版社】Perimeter Editions, 2025年
【装丁】Softcover(ソフトカバー)
【Pages】112 pages with col. illus.
【サイズ】26.5 × 21 cm
【状態】A: New
オーストラリアの写真家 Ying Ang(イング・アン) による写真集『Fruiting Bodies』です。
本書は、キノコを生物学的存在でありながらフェミニズム的メタファーとして再構築する試みとして制作されました。キノコは「生殖」や「女性の身体」をめぐる支配的な語りを揺さぶる、生成的で自立的な力として描かれています。
アンの写真は、発生のさまざまな段階にあるキノコを描いています。孤立して立つもの、寄り添うペア、朽ちて胞子を放つもの──それらの姿は、柔らかくも強靭で、官能的でありながら不可解な、女性の身体の寓意として現れます。
うねるような茎や質感のある傘は、芸術や文化の中で女性が性的・生殖的に表象されてきた歴史を想起させつつ、同時にそれを拒みます。従来の「女性=生産の器」としての象徴とは異なり、これらのキノコは腐敗と再生を繰り返す循環の中で生きる存在として描かれ、誕生・死・変容の境界を曖昧にします。
進化論の一部では、更年期以降の女性の存在を「生物学的な余剰」ではなく、知識や文化を次世代へと伝える共同体の維持に欠かせない重要な段階と捉えています。
本書『Fruiting Bodies』は、こうした**「非生殖期」にこそ宿る力**に注目しています。森の地中に広がる菌糸が見えないところで生態系を支え続けるように、生殖を終えた女性たちもまた、社会を深く形づくっているのです。
エコフェミニズムの思想に基づき、アンは「男性中心社会が地球と女性の身体を同じ論理で搾取している」とする批判に応答します。『Fruiting Bodies』が示すのは、菌類的で根茎的、集合的で撹乱的な「新しい生産のモデル」です。アンは、生殖力のフェティシズムを超えた、知的で共同的、そして絶えず進化し続ける創造の力を提示しています。









